名古屋高等裁判所金沢支部 昭和25年(ネ)107号 判決
控訴人は原判決を取り消す。控訴人がその長男伊藤景光の昭和十九年三月二十七日の戦病死により恩給法第七十三条に基き恩給の支払を受ける権利を有することを確認する。訴訟費用は第一、二審とも被控訴人の負担とする、との判決を、被控訴代理人は控訴棄却の判決を求めた。
控訴人は請求原因として控訴人の長男伊藤景光は陸軍飛行上等兵として軍務に従事中、昭和十九年三月二十七日ニユーギニヤ方面に於て戦病死したので控訴人はその遺族として同二十年十一月十六日恩給局に対し恩給の請求を為したところ恩給局に於ては勅令第六十八号により恩給の支給は出来ないとしてこれに応じない。然しながら控訴人は恩給法第七十三条により父たる遺族として扶助料を受ける権利があるから右権利の確認を求める為本訴に及ぶと陳述した。
被控訴代理人は答弁として控訴人の長男景光がその主張の如く戦病死したことは認めるが軍人の恩給は昭和二十一年二月一日の勅令第六十八号により支給せざることになつているから本訴は失当であると述べた。
三、理 由
控訴人の長男伊藤景光が陸軍飛行上等兵として勤務中昭和十九年三月二十七日ニユーギニヤ方面で戰病死したことは当事者間に争がない。控訴人はその父として恩給法第七十三条により扶助料を受ける権利を有する旨主張するが軍人の遺族たるによる扶助料は昭和二十一年二月一日の勅令第六十八号により支給しないことに定まつているから控訴人は扶助料の支払を受ける権利なきものといわなければならない。控訴人の援用する恩給法第七十三条のいわゆる公務員又はこれに準ずべき者とは同法第十九条に掲げる如き者をいい、控訴人の長男の如き軍人を含まないのであるから控訴人の主張は失当である。従つて控訴人の本訴請求は理由がないからこれを却下した原判決を取り消してこれを棄却することとし、訴訟費用に付き民事訴訟法第九十六条、第八十九条を適用し主文の如く判決する。
(裁判官 観田七郎 正田義盛 水越政雄)